100424 鹿

 

               鹿                      村野四郎

    鹿は 森のはずれの                 彼は すんなりと立って
    夕日の中にじっと立っていた            村の方を見ていた
    彼は知っていた                    生きる時間が黄金のように光る
    小さい額が狙われているのを           彼の棲家である
    けれども彼に                     大きい森の夜を背景にして
    どうすることが出来ただろう

  この作品は、村野四郎の「鹿」という作品の中にある一行である。佐伯城南中学校に勤めていた時、、中国研の城島集会で佐伯市の発表の資料として、詩の授業をしてその内容をレポートにまとめるという担当になった。当時使っていた光村図書の教科書にあったこの詩を使うことにしたが、授業をどう展開するかに悩み、仲の良かった二つ下の、それも社会科担当の先生と夕方生徒昇降口の階段に腰掛けて話し合ったことを覚えている。

 結局この詩の中心である「生きる時間が黄金のように光る」に少しでも迫るために、2行目の「じっと」と7行目の「すんなり」の違い、動きを考えさせてみようとなった。授業の結果は、ある女の子がこの詩の世界を「色」で表現してくれたことで救われた。それ以来、詩の授業を大事にしてきたし、この言葉、「生きる時間が黄金のように光る」はいろんな場面で使ってきた。たとえば、卒業のサイン帳に、結婚式での寄せ書きに、別れの言葉に・・・・・・。

 その言葉が目の前にある。そして、それを書いた人は私がある中学校で担任をし、国語を教えた人だと教えてくれた。ひょっとして、その言葉は、私が授業で使ったかもしれないし、ひょっとして、卒業の時書いてあげたものかもしれない。それがその子の記憶の中にずっと残り、今、形となってこの作品になったと考えると幸せな気分になっていく。(4/11)

“100424 鹿” への2件の返信

  1. 知多のあっちゃんより

    岐阜の山中から帰って、この詩を見つけました。
    良い詩ですね。そして、教師って良い仕事ですね。
    良い方達に恵まれて良かったなあと嬉しく思っています。
    やはり、人徳でしょう。

  2. メカ音痴レディー

    こんな時って教師人生への至福の時でしょうね~!!
    動機は「お茶とお菓子」だったのにね・・・・(笑い)

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