「さげもん」を見たいというのが今回の柳川訪問の理由である。が、もう一つ理由はあった。ちょっと照れくさいので佐藤さんには言わなかった。ここに「北原白秋詩集」(新潮社文庫、昭和31年1月25日12版、定価70円)がある。31年とあるからおそらく古本だろう。その時ハイネ詩集も買って、今も本棚のどこかにあるはずだ。ちょうどそんなちょっとカッコつける年頃である。
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その本の中で今でも心に残っているのが、「邪宗門」の『われは思ふ、末世の邪宗、切支丹でうすの魔法』と「思ひ出」の自序にある『私の郷里柳河は水郷である。さうして静かな廃市の一つである』の二つのフレーズである。「邪宗門」ではなんとも官能的な言葉の魔法に夢中になってしまった。そして、「思ひ出」では廃市水郷柳川への強い憧れが残ったのである。