110112 山芋

     

 「今度また山に行きましょう」
いつ頃からか冬場になると山芋掘りに連れて行ってくれるようになった。ずいぶん足手まといになっているだろうにと気の毒なのだが、気持ちよく誘ってくれる。山に囲まれた所で育った彼は、ほんとに山のことをよく知っている。山芋に関して言えば、この時期になるとツルは枯れ、全てが途中で切れ、どこにつながっているのかは素人ではまったく分からない。それを推理してここだと見つけるのである。
 時間通り8時半に迎えに来てくれる。道路に設置されている温度計は1度を示している。始めに行った場所は左手に県の農業公園が、そして、すぐ上を湯布院への高速道路が通っている。手前の田んぼには氷が張っている。何年か前に何度か来たことのある場所だ。そろそろいい頃ですよ、と張り切ったのだが、登ってみて驚いた。あるはあるは、至るところ穴だらけである。イノシシではない、人間である。最近山芋掘りの人がずいぶんと増えたという。
 あきらめて移動。昼までに6本掘る。ほとんど彼が掘りあげたもので、私も見つけてもらったツルを手がかりに掘ってみたが、1本は途中で石に阻まれてあえなく撃沈。もう1本も掘るだけ掘って、最後は彼に掘りあげてもらった。
 気がついたら山の中はけっこう暖かい。何より風のないのがありがたい。そして、ただひたすら掘り続けるので汗ばんでくる。明日には身体が悲鳴をあげますよと脅されたが、たしかにすでに左腕が痛くて上がらない。しかし、妙に充実感がある。土と格闘して、汗をかいて、山の恵みを頂いて、悪いわけがない。