![]() |
![]() |
神田川。この電車に向けて檸檬を投げたのかな? | スクランブル交差点。今ではどこにでもある風景! |
ひょんなことから「おくりびと」を観る。文化の森大学では講座の一つとして映画鑑賞をすることにしている。これまで、18年「北の零年」、19年「蔵」、20年「博士の愛した数式」、21年「武士の一分」を鑑賞してきて、今年は「幸せの黄色いハンカチ」であった。ところが、前日試写をしたところ、パソコンではきれいに写った映像もスクリーンに拡大するとぼんやりとしてはっきりしない。古すぎたのかな?映画サイズの横長の画も妙に観にくい。あわてて第2候補だった「おくりびと」に変更する。
変えてよかった。ずいぶん観易かったし、内容も素晴らしく、心に残った。
まず、映像。山形庄内地方の移り変わる四季の自然が表情豊かで美しい。広々とした田んぼに遠くには雪を被った鳥海山がその優美な姿を見せる。冬には鶴が舞い、春にはサクラがその花びらを舞い散らせる。どこかで見た覚えがあると思ったら、藤沢周平の小説に登場する舞台である。
次は音。それもふたつ。主役の男は元チェロ奏者という設定である。彼が劇中で弾くチェロの深く暖かい音色が、内容と風景とぴったり合っている。「静謐(せいひつ)」という言葉が浮かんでくる。
もうひとつは衣ずれの音。納棺の儀式がひたすら美しい。特に色の失せた唇に紅を差すことであたかも命がよみがえるように見える死に化粧と、死に装束に着替えさせる時の衣ずれの音が、その場の空気をピーンと張り詰めさせ、同時になぜか心地良く響く。本木雅弘の所作は舞を見るようで、ひとつの様式美にまで高められているといっていい。俳優でうまくいかなければ納棺師でもやっていけるよ、と言われたとかいうエピソードもありそうだなと思える。