090705ほたる3

090630合歓の木 〔 山国・吉野合歓の木 〕

 犬にせがまれて散歩に出ていた上の娘が笑いながら言います。お父さんの好きなもの、見せてあげようか。合わせた掌を近づけます。そっと開いた掌の中から、たった一匹の蛍がやわらかな光を点滅させています。いつの間にか蛍の季節になっていたのです。(61,6,2)

 この上の娘の子どもが私を「おーちゃん」と呼ぶ。サーズの時、就学前だったので、4月から7月まで日本に避難してきた。この時、始めて彼をほたる狩りに連れて行った。それからはこの季節になると決まって電話がかかる。「おーちゃん、ほたる、飛んでる?きれいだったね!」。また、一緒にほたるを観に行くのが夢である。

 下の娘が咳き込みます。時計はとっくに9時を回っています。娘を抱いて外に出ると、向こう岸で小さな灯りがゆれています。もう蛍の出る季節になっていたのです。娘も私も、じっと息をつめて見つめています。ちょうど私たちの呼吸するようにゆらりと舞います。娘の目には、そして、心には、この淡い灯りがどのように映っているのでしょうか。いつか、娘の咳は止まっていいます。(53,6,4)

 こうした体験がきっと人間の豊かさをつくってくれると信じて・・・・。